なぜ今、多世代同居住宅が求められるのか
昨今、地域型住宅グリーン化事業や長期優良住宅化リフォーム事業への補助金のオプションとして三世代同居住宅への補助金が国の施策として用意されています。
三世代同居に対応した住宅リフォームを行う場合の特例措置やその条件については、以下のリンクを参照ください。
3世代同居住宅リフォームとは
この考えが設立された当初は、「3世代が同居している」ことが条件でしたが、実際に3世代が同居できているかどうかを確認することは困難なため、定義を「3世代が同居できる住宅」ということにして、玄関、浴室、トイレ、キッチンのいずれか2種類以上が2箇所ずつあることと、ある意味わかりやすい条件となりました。
では、なぜ急にこのような住まい方が求められるようになったのでしょうか?
国の説明では、希望出生率1.8人の実現のために親世代が子育てをしやすくなるように、つまり一言で言えば、「少子化対策」を目的としているそうです。
そのことは、一理ありますし、実際に3世代同居の家庭の方が出生率が高いというデータがあるようです。しかし、私は本当の目的は他にもあるような気がしています。
これまでは、高齢者の住まい方として歳をとったら「老人ホーム」に住むという選択肢がありました。いわゆる段階の世代がその年令に近づくと「高専賃(高齢者専用賃貸住宅)」や「サ高住(サービス付き高齢者住宅」への補助事業ができて、高齢者は高齢者だけが住む建物で暮らすという方向へ向かっていました。そうすることで、親世代が自分の親の介護から手が離れ、働きやすくなると考えられていたからです。
しかし、実際はどうでしょうか?
補助金目的だけで建てられたこうした高齢者住宅は、都心部では、非常に高額な賃料設定となっているため、収入がない高齢者が住むことは、ハードルが高くなっています。また、昨今、人手不足によって介護会社の倒産が続いていて、それらの施設を運営する会社も不足しているというのが現状です。そのような理由から運営がうまくいかなくなった高齢者施設は、空室率が増えています。
今回の三世代同居住宅は、以上ように高齢者は高齢者だけが住む建物で暮らすという考えによって生じた三世代同居住宅の穴を補う必要性に気がつき、これまでの住宅政策に大きな修正をかける動きであると私は思います。
少子化が進む一方で、何故か待機児童が減らないという現状。高齢者が老後も家族と一緒に過ごしたいという素直な思い。子どもと高齢者が一緒にいることで親世代が安心して働けるという環境づくりが、長い人類の歴史を振り返ってみても本来自然な姿なのかもしれません。
ですので、多世代同居住宅を計画するときには、単に補助金の対象となる条件にだけとらわれるのではなく、次世代までも住み継げるような住宅としての多世代同居住宅を意識することが大切なのだと思います。