住宅ストック循環支援事業の落とし穴
今年に入ってから宅地建物取引業法の一部を改正する法案が決定しました。その改正内容のひとつに建物媒介契約締結時に建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施するもののあっせんに関する事項を記載した書面の交付や買い主に対してインスペクションの結果概要等を重要事項として説明することが義務付けられることになります。
そうした背景もあって、弊社にもインスペクションのご依頼やお問合わせが増えてきてます。
その一方で平成28年10月11日の補正予算で成立した「住宅ストック循環支援事業」の補助金を目的としたお問合わせも増えてます。
この補助金の種類は大きく3種類あります。
①住宅エコリフォーム(限度額30万円)
②良質な既存住宅の購入(限度額50万円)
③エコ住宅への建替え(限度額50万円)
今回は、②良質な既存住宅の購入(限度額50万円)について、補助金をもらうときの注意したいことを説明します。これは、簡単に言うと既存住宅を購入してエコリフォームをした場合にもらえる補助金です。しかしこれにはいくつかの条件をクリアする必要があります。
- 既存住宅の購入者が自ら住む家で年齢が40歳未満であること。
- リフォームの内容が条件に当てはまるエコリフォームであること。
- 売買に際してインスペクションを実施し、既存住宅売買瑕疵保険に加入すること。
1.と2.は、それほど問題ありませんが、3.の「インスペクションを実施して既存住宅売買瑕疵保険に加入する」というのが、注意点です。
これは、建物の売り主が宅地建物取引事業者(不動産屋さん)か個人かによって、既存住宅売買瑕疵保険に入るルートが異なります。宅地建物取引事業者が売り主となる場合は、売り主事業者が事業者登録をして、その対象物件を事業登録(平成28年12月12日~平成29年3月31日)を行っている物件である必要があります。つまり、この対象となるかならないかは、購入する次点で売り主へ確認しておく必要があります。そして、対象となる場合は、売り主である業者から保険会社へ既存住宅売買瑕疵保険へ加入するためのインスペクションを依頼する必要があります。つまり、リフォーム会社や工務店でインスペクションを行ったとしても既存住宅売買瑕疵保険には加入できませんので、ご注意ください。
また、既存住宅売買瑕疵保険は既存住宅の引渡し時から適用となるため、引渡し前にインスペクションを行わなければならないのも注意点です。つまり、引渡し後にインスペクションを行っても既存住宅売買瑕疵保険に加入できないため住宅ストック循環支援事業のインスペクション補助金対象になりませんのでご注意ください。
では、売り主が個人の場合はどうでしょうか。この場合は、インスペクションを行なう工務店やリフォーム会社が既存住宅売買瑕疵保険の検査機関事業者登録をしている必要があります。弊社も含めて、工務店やリフォーム会社で保険会社へ検査機関事業者登録までしているところは、まだまだ少ないと思います。
以上を鑑みるとなかなか使いにくい補助金だと思いますが、初めに説明した3種類の補助対象のうち、①住宅エコリフォーム(限度額30万円)であれば比較的利用しやすいと思いますので、②良質な既存住宅の購入(限度額50万円)の条件を満たすのが難しい場合は、こちらを利用することをお奨めします。
・住宅診断